絵本のあひる 「大砲の中のアヒル」
  
「大砲の中のアヒル」
1990年-平和博物館を作る会出版委員会
Printed in Japan

世界平和の絵本シリーズの中の1冊で、企画・出版は日本からですが、著作はニュージーランドです。
お話は多分、産業革命以前のヨーロッパ、架空の国同士ののんびりとした戦争のさなかです。
1台しかない大砲の中であひるが巣籠りをしてしまい、相手国と話し合いの結果、なんと戦争は中断されます。あひるの卵が孵るのまでの3週間、両国は戦争を忘れてのどかな日常に戻ります。やがてあひるの雛が孵り、さあ戦争だ!しかし、両国ともすっかり戦う気は失せていました。ラストシーンは将軍と市長の娘の結婚式です。

この絵本は、あひるの描写は大した事ないのですが、ストーリーを補う挿絵の魅力で購入しました。腑に落ちないストーリーも、まんがっぽい絵柄でつい納得してしまいます。

兵隊のコスチュームから、モデル国はフランスとドイツです。(笑)
フランスの国鳥はニワトリで、ベビーグッズにプリントされてる柄は水鳥が多いので、鳥の大好きな国民性ではないのか…私の見解です。映画「WATARIDORI」もフランスでしたしね。
市長さんの応接室に飾られている絵は、ドイツにじゃがいもを広めたフリッツ将軍みたいだし、結婚式のケーキには鳥のデコレーションが施されています。

しかし、あひるの習性を考えると、大砲の中に巣作りするとはどうも考えられません。ひょっとしたら、大砲の中にあひるの巣を仕込んだのは(ドイツ軍の)市長の差し金ではないか?と疑ってしまいました。
だって戦争を休止する申し出も、兵士たちのアルバイト斡旋も市長自らの提案です。さらに自分の娘と仲を取り持つあたり、これは最初から工作したのではないかと疑ってしまいました。

娘の描写も作者の本意なのか画家の意向なのか、実に思わせぶりな態度で描かれています。そう思うと絵本の初めから終わりまで、本当はこの(ドイツの)市長親娘の策略なのではないかとさえ思ってしまいました。ここに本当の戦争が描かれている!?
そう考えると結婚式の末尾に行進するのは「戦争回避大作戦」の最大の功労者、ひよこを連れたあひるなのはとても納得が行きます。…子供向けの絵本をこんな斜め読みするのはどうかと思いましたが、絵を見ながら色んな思いを馳せらせられるのが絵本の魅力です。

最後に。あひるにパンやケーキをあげてはいけません!



 
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