絵本のあひる 「しちめんちょうおばさんのこどもたち」
  
「しちめんちょうおばさんのこどもたち」
1974-福音館書店・こどものとも

しちめんちょう「おばさん」て言うから多分、卵を生まなくなって久しい高齢の七面鳥と思われます。渡りをせず年に数回繁殖する鳥は、卵を見ると温める習性があるようです。

この絵本の主人公、しちめんちょうおばさんも沼のほとりで産み捨てられた卵を見つけ、自分の産んだ卵として温めます。やがてひよこが孵り子育てを始めますが、自分と習性の違う子供たちの行動に戸惑いながらも、一生懸命に世話をする姿が健気です。

しちめんちょうおばさんがキツネを追っ払うシーンは、ひよこ達の母鳥が居なくなった原因を容易に想像させます。ひよこ達は、しちめんちょうおばさんを母鳥と信じて疑わない様子ですが、やがて秋になり、成鳥した子供たちは自分達がマガモであると悟ります。
仲間と一緒に南へ渡ろうと、しちめんちょうおばさんにねだりますが、おばさんは子別れの時季が判っていたかのように静かに皆を送り出しました。

擬人化せず、ちゃんと鳥の習性に基いて書かれた物語が心に沁みます。絵もキャンパスにパレットナイフでラフに描かれた線が、鳥を良く解って描いていると感じさせます。

人間も、鳥を飼った事があればまず「卵孵したい病」にかかるのですが、その考えは大方エゴであると思います。しかし、エゴを乗り越えないと子孫を正しく育てる境地にはなれないかも知れません。
この絵本は「年中向き」とありますが、狙いは年中の子育てをしているお母さんへ向けてのメッセージではないかと思いました。



 
The Ugly Duckling >>
 
←HOME  ←libraryトップ
Copyright(C)2001〜此葉家 All Rights Reserved.